エネルギーという視点から見つめる × 岡山県議会議員/子ども未来・愛ネットワーク 大塚 愛 さん



    2011年3月11日の夜に福島県川内村を出発し、岡山の実家に避難した大塚愛さん。自らの原発災害の体験を語る活動は250回以上。加えて、避難移住者の受け入れや交流会、保養の受け入れ、福島へ帰る人々への支援などを継続的に行い、2016年10月から岡山県議会議員としても活動しておられます。


    自然に対する思いは「ごめんね」。人間として責任を感じている。


    西山 僕たち実行委員会は「ひまわりプロジェクト」を通して福島に関わるようになり、現地と岡山の人々との温度差を埋めたいと思って活動を始めたんです。


    大塚 ひまわりといえば、岡山に避難して2か月後、川内村に戻った時のこと。わが家に完全防備をして行かなきゃいけない状態で、例年なら畑仕事をしてる季節なのに雑草が生え始めていて…。「ひまわりが土を浄化する」って聞いて、タネをまいたの。「ごめんね」の一念でした。


    西山 なぜ、「ごめんね」?


    大塚 私は被災者でもあるけど、原発災害を止められなかった人間の一人として責任があると思ったんです。私の心から出たメッセージが「ごめんね」でした。


    保養を受け入れることで福島とつながることができた。


    原発事故避難者の声を行政につなぐ活動から、市民の声を直接、行政に届けて活かす県議へ。

    大塚 6月頃から、岡山に避難されている人の交流会を始めて、メーリングリストを作ったんです。仕事は自分で見つける人が多かったけど、住居や生活物資、避難者同士がつながる場や情報を求めておられたので。2011年12月には、チェルノブイリ事故後に行われていた保養にならい、保養の受け入れを始めました。


    西山 対応が早いですね。


    大塚 自分にできることを何でもしようと思って保養を受け入れたら、福島の人たちがすごく悩んでることが分かったんです。出たいけど出られないから、せめて休みの間だけでも保養に行きたいと。


    西山 出たくても出られない理由は?


    大塚 自主避難の重さというか、経済的なことや地域との関係、三世代で住んでいる人も避難が難しかったですね。


    西山 福島の人とのつながりができて、状況が見えてきたんですね。


    何もできなくても関心を持っていて欲しい。


    大塚 放射能に関しては最初、「どんなことになるか分からない。危ない、救いたい」という思いでしたが、福島の人とつながることで、残りたい気持ち、住み続ける気持ちも分かるようになりました。放射能被ばくを避けることだけが人生で大事なことなのかなって。家族、地域との関係、リスクを引き受けても故郷で暮らしていこう、頑張っていこうっていう気持ちは理解できたし、私も自分が住んでいた川内村がからっぽになってしまうのはつらい…。今も、川内村に人が戻っている様子を見ると、すごく救われた思いがします。両面あるんです。同じ福島の景色を見てるのに、お互い違う景色に見えてる状態。震災後2〜3年の間は、避難した人と残った人の溝が深まった時期。二次災害だったなって思います。どちらも傷ついてしまう。どっちも分かるからこそ、違う立場の人同士が話をすること、お互いを知ることがすごく大事だということを学びました。


    西山 岡山にいると、身近に原発がないから分かりにくい面はありますが…。


    大塚 伊方原発に何かあったら岡山にも偏西風で放射能は流れてくるから、人ごとではないんだけどね。原発から40kmも離れた飯館村だって、放射能の濃い風が1回か2回ふっと吹いただけで、あれだけの汚染が起きてるんです。でも、私も岡山育ちだから、福島に住んで初めて原発を意識したんですね。さらに母親になったから、子どもの世代のために何とかしないといけないと思うようになりました。原発から20km先の地域に住み、12年間その問題に向き合ってきたのに事故を防げなかったという後悔の念が私にはあります。他の人たちに話を聞いても、例えば放射能に対する拒否感が大きい人の気持ちの底には気づかずに被ばくしてしまった理不尽さや怒り、お子さんの体調不良など辛い体験があることも多いです。だからこそ、放射能に対する感覚が違うのは当然だけど、それを共有しようとしたら誰かを傷つけることが起こってしまうのがつらい…。


    もう二度とあんな思いをしなくていいように原発災害を防ぎたい。


    大塚 西日本豪雨災害が起きて、岡山のみんなも「二度とあんな災害を起こしたくない」って思っているでしょう。原発事故の被害者も同じ。「もう二度とあんな事故を起こして欲しくない」。悲しみ、つらさ、いろんな思いが心に刻まれています。そのために何ができるか、みんなが関心を持つことが大事だと思います。何気なく差し込むコンセント。その先に送電線がつながっていて、どこかの発電所につながっている。みんな電気を使っている。今まで電気のことはおまかせだったかもしれないけど、ヨーロッパでは火力や風力など、電気を選ぶことが可能になってきています。


    西山 人間は自然の一部なのに経済を優先して自然を汚し、破壊する一方です。


    大塚 廃棄物の最終処分方法は、まだ決まっていませんからね。今、高レベル放射性廃棄物の処分場所を選定するためのマップが公表されていますが、廃棄物の問題は日本人が考えなきゃいけないことだと思うけど、原発を運転している限り廃棄物は出続けています。


    西山 抜本的な解決方法は考えられないものですか?


    大塚 廃炉の技術は進むでしょうが、放射能を無害化する技術の研究開発は今後の課題。地球環境に負荷の少ない再生可能エネルギーはもっと増やせると思うし、省エネも進められると思います。


    西山 日本の技術に期待したいですね。


    岡山県議会議員

    子ども未来・愛ネットワーク

    大塚 愛(おおつか あい)

    1974年岡山市生まれ。岡山県立岡山朝日高校、岡山大学卒業。1999年より農業研修のために福島県へ。川内村で農業、大工などで生計を立てていたが、2011年3月、福島第一原子力発電所事故後、家族と共に岡山へ避難。同年5月に「子ども未来・愛ネットワーク」を立ち上げた。2016年より岡山県議会議員。



    子ども未来・愛ネットワーク

    2011年5月に岡山市で発足。岡山市民と避難者・移住者をつなぐネットワーク。親子の暮らしに役立つ情報発信、悩み・健康相談、心のケア、岡山での暮らし体験プランなどを実施している。

    岡山市北区建部町吉田321(大塚方)

    ☎ 090-9468-1627

    info@kodomomirai.org